羽村太雅さん 手作り科学館 Exedra 館長
羽村さんは東京大学大学院で、宇宙人を探したり、隕石が衝突して地球で生命の材料ができる過程を調べたり、電波望遠鏡で土星の衛星を観測する研究を立てたりと、様々な研究をしていた。そんな羽村さんは「キャンパスが柏にあって移り住んできた。柏での生活に慣れず孤独だったので、友達が欲しいなぁ~と思い、学生サークルをつくりました」という。専門とする科学の知識や考え方を伝えたり、最新の研究成果を一緒に楽しんだりする、大人から子供まで楽しく参加できる講座をはじめました。
はじめは大学構内や公民館やカフェなどでイベントを開催していましたが、徐々に講座が人気となり、継続的な活動の場が必要になったので場所を探しました。地元の方のご紹介で、柏駅からほど近い場所にある、古い空きアパートを一棟まるごと借りられることになりました。
「アパートを初めて見た時は、「マジかよ、住宅街のど真ん中だし、夜は暗いし、お客さんは来ねぇだろ、奥まってるし」という想いを一瞬いだきました。でもそれ以上に、ようやく物件にめぐりあった、これから何かが始まるぞ、という期待が大きかったですね。 工事のために初めて室内に入った時「、さぁ大変なことに手を付けてしまったぞ」という怖さと、新しい未来が始まりそうなわくわくが半々くらいでしたね」と羽村さんは話す。
サークルの仲間たちに加え、地元住民も参加してDIYで改装・・・「手作り科学館 Exedra」(エクセドラ)と名付けた
この10年羽村さんが主催した講演は300以上!Exedraで実施した一番の人気講座は、最新の科学に日々取り組む現役の若手研究者から研究の話を直接聞ける「研究者に会いに行こう!」という理科実験を含む講座でした。講座定員20人×6回(計120名)のイベントに約600名分の申し込みがありました。さらに倍率が高かったのは、2017年の夏に開催した理科の修学旅行だといいます。20名の定員になんと108名の応募があったとか。
「科学ってすごく難しいと思われがちですが・・・実は身近なところにも科学のタネはいっぱいあります!世界最先端の研究の話を聞いたり、一緒に実験をしたりしながら、科学の世界の魅力と奥深さに接していただけたら」と話す羽村さん。『気軽に楽しめる科学実験をおこなう「手づくり科学館 Exedra」は日本全国でも極めて珍しい存在 そして今年3年目を迎えた。
骨格標本に触って学ぶ講座は大人気!!
イノシシ、シカ、キョン、ワニ、ビーバーなどなど骨格標本にどんどん触れちゃう!触って質感を確かめたり、匂いを嗅いで野性味を感じたりと、思い思いに触れ合うことができます。
羽村さんが挑む!日本初「骨ガチャポン」!
骨格標本は博物館では静かにみるもの。しかしここでは全く違います。羽村さんは大いに触って骨の意味を深く学ぶ・・・体感してより興味・関心を持ち、学べる面白い企画を考えている。それはなんとガチャマシンに羽村さん の手作り!本物の「キョンの骨」を封入し、出た骨を全身骨格標本と見比べてパズルのように同定して楽しんでもらおう、という取り組みです。
■羽村さんはものすごい長い道のりの作業を行っている!!
- 猟師さんから連絡を受け、駆除された動物を引き取りに行きます。
- 実験室につるして皮をはぎ、、肉を取り外します。状態が良ければBBQなどにすることも。
- 多少肉がついている骨を煮込んで、ホロホロになった肉を外し、何度か煮込みながら、歯ブラシしでとり、ピンセットや針金で細かい肉を落としていきます。
- ある程度きれいになったら、入れ歯洗浄剤に漬けて、見えない肉を酵素の力で分解してもらいます。
- とり切れないタンパク質はパイプ洗浄剤に漬けて溶かします。
- もう何度か煮込んでおおざっぱに脂を抜き、アセトンにつけたり、オキシドールに漬けたりして脱脂と漂白をすると、だいぶ白くなります。
- 土台を作って組み立てると、ようやく完成です!
ガチャマシンから出てきた骨のピースが全身骨格標本の中でどこにあたるか?探していく!!・・・そんな計画!(↓ガチャマシンに骨ピースが入る予定)
羽村さんの将来の夢
自分(というより自分の取り組み)がこの世に必要なくなることですね。 社会で科学に対する理解が進み、意識が高まり、人々が芸能人のスキャンダルよりも最新の科学の本質を議論するような社会になってほしい。科学の研究、特に自分を育ててくれたし全人類にとって価値があると思っている自然科学の基礎研究に予算が回ってくるような基盤ができあがったら、もう自分の仕事はないはずなので、とっとと引退して娘の将来を眺めて楽しみたいです。 その実現に向けて、まずは「社会課題の貢献に科学コミュニケーションという手法が役立つ」ということを知ってもらって、いろんな人たちに必要としてもらえる存在になろうとか、街の様々なシーンに潜む科学を可視化して役に立つ付加価値をつけて紹介するとか、小さな科学館を各地に増やすとか、各地に散らばった科学コミュニケーションの担い手をつなげるとか、いろんな形のソーシャルビジネスを展開して、まずはこの道で食っていけるようになろうと思っています。
羽村太雅さんプロフィール
1986年山梨県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程/KSEL創立メンバー
慶應義塾大学理工学部卒業後、「宇宙人を見つけたい」との想いを叶えるため東京大学大学院 新領域創成科学研究科へ。専門は惑星科学、アストロバイオロジー。隕石の衝突を模擬した実験を通じて生命の起源を探る研究を続けてきた。研究の傍ら、2010年6月に柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)を立ち上げ、地域に密着した科学コミュニケーション活動を行なっている。その活動が認められ、日本都市計画家協会優秀まちづくり賞やトム・ソーヤースクール企画コンテスト優秀賞などを受賞。また「東葛地域における科学コミュニケーション活動」が2014年度東京大学大学院新領域創成科学研究科長賞(地域貢献部門)を受賞した。ちば起業家優秀賞(千葉県知事賞)、日本サイエンスコミュニケーション協会 ベストプレゼン賞、トム・ソーヤースクール企画コンテスト 優秀賞など、受賞歴多数。メディア掲載・出演歴多数。旅行業務取扱管理者
手作り科学館 Exedra の情報
住所:千葉県柏市末広町9-6 柏嶋屋荘
HP: http://selexedra.stars.ne.jp
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